Vol.92

更新日:2022.12.16

後悔しないリフォームを実現するために
やっておきたい準備と依頼先選びのポイント

リフォーム基礎知識

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まずは家族で話し合ってリフォームの目的を確認

 家で過ごす時間が増えた昨今、「わが家のあちこちで不具合や劣化など気になる部分が見えてきた」という人も多いのではないでしょうか。年末年始など家族がそろう時期はリフォームについて話し合う絶好のタイミングです。

 住宅設備のショールームに行ったり、リフォーム会社に見積もりの相談をしたりといった具体的な行動を取る前に、ぜひやっておきたいのが、家族できちんと意思の統一を図っておくことです。「キッチンを新しくしたい」「内装をきれいにしたい」というモノについてのことだけでなく、「今、どんなことに困っているのか」「リフォームをしてどんな暮らしにしたいのか」というリフォームの目的やコンセプトについて確認しておくことが大切です。

 そうした目的やコンセプトが明確になっていれば、相談したリフォーム会社からも「そういう目的ならこういうキッチンがいいですよ」「そういうお困りごとがあるなら、こういう方法がありますよ」といったプロの提案を引き出しやすくなります。

 またリフォームしたい箇所や課題が複数あるようなら、優先順位もつけておきましょう。予算次第ではどこまで実行すべきか、線を引かないといけない場面も出てきますが、そうした際に必要以上に迷うことが少なくなります。そして、そうした準備をしておくと、優先順位の高い工事についてしっかりと予算を配分するといった判断もできるようになります。

 ポイントは、リフォームの目的を家族で共有すること。そうした話し合いをしないまま、いきなりリフォーム会社に見積もりを依頼したり、設備機器のショールームへ見学に行ってしまうと、見積もりの金額や設備機器の実物などに目を奪われて、あれもいい、これもいいと本来の目的を見失ってしまいがちです。家族全員でリフォームのゴールを設定しておけば意思がぶれることなく、本来の目的に沿ったリフォームを実現しやすくなります。

自分たちの求めるリフォームに合わせて依頼先を検討①

 家族と話し合い、リフォームの目的が定まると、そうした工事が得意そうな依頼先を選ぶことになります。ひとくちに「リフォーム会社」といっても、下記のように特長もさまざまですし、得意とする分野もそれぞれに異なります。

●ハウスメーカー系
 全国的な規模で社員数が多く、営業・工務・設計の部門が分かれており、均一的な接客・提案のクオリティが期待できます。家全体を視野に入れた範囲の大きなリフォームが得意です。
 その反面、実際の施工は外部に委託する傾向があり、個別の細かな対応については手が回らないこともあります。

●リフォーム専業系
 リフォームに特化した豊富な実績や技術力があり、細かい対応にも慣れています。コストパフォーマンスの高いリフォームが期待できます。その一方で、得意な分野に偏りがあることも。事前に施工例を確認し、作風などが自分たちの好みに合うか、チェックしておくことをお勧めします。

●住設メーカー系
 もともとは水道工事の会社だったり、サッシ販売の会社だったりするリフォーム会社の場合は、そうした設備や建材が関係する工事には豊富なノウハウがあります。水回りや窓の交換など、範囲が絞り込まれたリフォームでは特に強みを発揮します。ただし、特定のメーカーのリフォームチェーンなどに加盟している場合はそれ以外のメーカーの製品を使えなかったり、設備以外のリフォームを不得手としている場合もあります。

自分たちの求めるリフォームに合わせて依頼先を検討②

●地元の工務店
 長年、地元でのリフォームに慣れており、気象条件や風土などの地域特性に合わせたリフォームが得意。規模が小さいため、社長が営業、施工、設計などを把握しており、きめの細かい対応が期待できます。その反面、社内の人材には限りがあり、過去のリフォーム事例以上の出来栄えは期待できない傾向も。

●設計事務所
 設計事務所に勤務していた経験のある社長が率いるリフォーム会社の場合、提案力が武器。間取り変更やキッチンの造作、インテリアの刷新などを予定している場合には候補になります。デメリットとしては、こだわりをもっていちから設計を打ち合わせていくため、プランニングに時間がかかってしまいがちな点が挙げられます。また、工事費用の他に別途設計料・デザイン料がかかる場合があり、費用が高くなることも。

●ホームセンター系
 ホームセンターや家電量販店などが窓口となってリフォームを行うケースもあります。店舗の一角に相談コーナーがあり、アクセスしやすいのがメリット。ただ、その多くは施工は別の会社に発注しており、部分的な補修や設備交換が中心。リビング丸ごとなど、複数の工事が必要なリフォームでは、実績やノウハウが不十分であることもあります。


 以上のような傾向を踏まえつつ、自分たちの求めるリフォームにふさわしい会社であるか、施工例をチェックしたりしてよく確認しましょう。

 また、「担当者がよかったから頼んだ」という経験談を耳にすることもあると思います。窓口となる営業担当者との相性はとても重要です。疑問に思っていることを気兼ねなく質問できるか、聞いたことにスムーズに回答してもらえるか、確認してみてください。

見積もりは金額ではなく、内容を見る

 依頼先の候補は1社だけだと、その対応や接客内容が適切なものであるかどうか、判断することができません。

 かといってあまりに候補が多すぎると、なかなか情報が整理できず、決めきることができなくなってしまいます。打ち合わせや現地調査に時間を取られてしまい、工事の開始もその分だけ遅れてしまうことにもなりかねません。見積もりの段階では3社くらいに絞り込んでおくとよいでしょう。

 複数の会社に見積もりを取ることを「相見積もり」といいます。打ち合わせの際には「他社にも見積もりを取っている」ということを伝えておくと、契約に至らなかったときにも断りやすくなります。

 見積もりを受け取ると、どうしても金額に目がいきがちですが、見積書に盛り込まれている項目や提案の内容は各社で異なるので、単純に金額だけで「高い」「安い」を判断することはできません。まずはその内容について、担当者に説明を求めましょう。

  工事内容が「工事一式 〇〇万円」となっている場合もありますが、それでは内容がわかりません。後から高額な追加費用を要求されては困ってしまいますので、きちんと内容を明記してもらうことが大切です。

 高価に感じられる項目については、なぜこの金額になるのか。建材・設備・工法についてはどのような選択肢があって、なぜこれを勧めるのか。コストダウンを図るとすれば、どうのような手段が考えられるか。疑問に思ったことはなるべく早い段階で聞いてしまいましょう。

 もし、そうした質問を面倒がったり、説明を手早くすませてしまおうとする場合は要注意。今後、プランの打ち合わせや着工後の現場でもそのような態度を取る可能性があるからです。

 3社ほどの候補に見積もりをとると、こうした各社の顧客対応の姿勢が比較できるようになります。詳細な説明を受けることができれば施主として提案や工事の内容を把握しやすくなりますし、他社でも同じことを聞いてその内容が適切であるか、確認することもできます。

 良心的な会社であれば、いますぐ施工する必要がない工事を提案することはありません。現在の家の状態を現地調査したうえで、施主の要望をきちんとヒアリングして、いますぐ工事したことがよい箇所、先々リフォームが必要なところを指摘してくれるはずです。

悪質なリフォーム業者を避けるためには

  国民生活センターなどには毎年のように多くのリフォームトラブルの事例が報告されています。「今すぐ屋根を修理しないと雨漏りする」「床下に水がたまって湿気がひどい」「外壁にひびが入っているので危険」などと脅されて高額な工事をされたというものや、契約してお金を払ったら工事の前に音信不通になった」というものもあります。

 なかにはノルマに追われる営業マンから「キャンペーン中でいま契約すればお得ですよ」などと、契約を急かされる場合もあるかもしれません。しかし、悪質なリフォーム業者を避けるためには、じっくりと納得のいくまで時間をかけて、前述のように見積もりや提案の内容を検討することが大切です。

 こういうときは「他社と比較したいから」と伝えて、いったん時間をおくようにしましょう。あらためて家族で話し合えば、リフォームの妥当性も冷静に検討できるはずです。それでも食い下がってくるような業者とはその時点で候補外。

 きちんと事前に家族と話し合っていれば、そうした業者に引っかかることはまずありません。後悔しないリフォームのためには、相応の準備が必要なのです。

施工事例や保険、アフターサービスもチェック

 依頼先を選ぶ際には、各社のウェブサイトで施工例もチェックしてみましょう。自分たちのイメージに合うような施工例がいくつも見つかるようなら、候補のひとつにしてもいいかもしれません。

 また完成見学会などを開催しているようならぜひ足を運んでみましょう。実際に施工された空間を体感することでその会社の作風や雰囲気を察することができるはずです。

 工事のトラブルの不安を軽減したい方は、リフォーム瑕疵(かし)保険の加入事業者であるか、確認してみてください。リフォーム瑕疵保険に加入していると、工事中や工事完了後に、第三者による検査を受けることができ、工事内容に問題があるときには施工した会社が責任を持って補修してくれます。また施工業者が万一倒産した場合には、保険法人から保険金として補修費用を受け取れるというメリットもあります。

 リフォーム後のアフターサービスの内容も重要です。リフォームが完了した後に不具合や変更したい箇所が出ることがあります。そうした際にスムーズにケアしてもらえる仕組みがあるか、定期点検や補修の体制はどうなっているかなどについて、確認しておきましょう。

 住まいは年を重ねていくごとにあちこちで劣化が進行していきます。リフォームが一度済んだらそれで終わりではありません。その後も長いスパンでお付き合いできるリフォーム会社を選びたいものです。

【著者プロフィール】
渡辺圭彦 / 住宅ジャーナリスト
1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、2004年よりフリーに。全国の住宅、工務店、建築家を取材して回るエディター&ライターとして活動中。著書に「住まいの進路相談室」(扶桑社)など。